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新しい年を、ここから

 

昨年の後半から自分の有り様が変化していく予感があり、今年はさらに大きく変化していくような気がしています。そわそわと落ち着かない気持ちに、一旦区切りを入れて新たな年を始めたい。そう思って「茶小屋 李舟」を訪れました。 

 

 

「茶小屋 李舟」は大阪の北、箕面の山の麓にある、中国茶を供してくださるお店。小さな一軒家。カラカラと引き戸を開けると静かな凛とした、それでいてあたたかい空間が在りました。床の間には1個の茶杯が捧げられています。このときのために店主が心を尽くして整えてくださった空間。

 

まずは入り口近く、お庭の見える座に座ります。店主がどんなお茶を、と私の所望を聴き、外をちらほらと舞う雪を観ながら選んでくださる。私は中国茶にも詳しくないし、茶事のことにも通じていないけれど、店主に委ねてゆったり寛いでいればいいのだと分かってきます。

 

奥の座に誘ってくださり、はじめに供してくださったお茶は白茶。大雪山に自生する樹齢300年の古樹。農薬も肥料も使っていない野生の樹。柔らかな産毛のある葉は日に透かすと金色に見えます。お茶の氣が現れてくれるタイミングをゆっくりと待ちながら、店主は静かにお話ししてくださいます。「野生の古樹のお茶がその氣を現してくれるには、こちらから少しずつ近づいていく」「強引に引き出そうとしては閉じてしまう」「お茶を聴く」そう言って、お茶の葉や急須にそっと耳を近づけます。見えないけれど確かにあるものを感じ取る。デザインという仕事と、とても通じるものがあります。クライアントさんの想いを聴くこと、適したカタチに表すこと。そうして、ここにカタチになったこの一杯。甘く、優しく、古樹なのだけれどなぜか若々しいと感じます。店主に教えられたとおり、飲み終えた杯を鼻に近づけ、氣を呼吸します。心が柔らかくほどけていき、涙が出ます。「このお茶は心を開いてくれるのです」私もこのようにカタチを表したい。

 

次にいただいたのは烏龍茶。鳳凰山で栽培されているお茶。こちらも葉を丁寧に温め、精魂尽くして入れてくださいます。甘い蜜のような香りが華やかに立つ。一流の職人さんがこのお茶のこの味と香りを、と腕によりをかけて作ったお茶。先にいただいた野生のおおらかなお茶と、この洗練された工芸品のようなお茶と。どちらの体験も素晴らしい。

 

静かに高揚する心と芯から温まった身体で、帰る時には再び雪が。「三が日に空から降るものは『御降(おさがり)』といって天からの祝福なんですよ」また、ここへ来たい。

 

 

・茶小屋 李舟:ウェブサイト