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観えている世界

 

テレビを見ていたら、映画監督をしているという耳の聞こえない女性が、映画を撮影している様子をやっている。カメラを回しているのは耳の聞こえる男性。いつもは自分と同じ耳の聞こえない人たちに向けて作っているが、今回初めて耳の聞こえる人たちにも向けて作っているとのこと。

  

「ドライヤーの音、結構うるさいんだけど」「クーラー切ろう、音が入ってる」耳の聞こえるカメラマンが言う。この言葉に耳の聞こえない監督がハッとする。

 

このときの彼女の表情。知らなかったことを「今初めて知った」瞬間の顔。何の色も付いていない、無垢な新鮮な顔。「周りにはこんなにたくさん音がある。すごい発見でした」と彼女は言う。また、耳の聞こえるカメラマンは、渋谷のスクランブル交差点で、道路を挟んで手話で会話する2人を撮影して言う。「周りの音がうるさいことが(耳の聞こえない人たちには)なんの障害にもなっていない」

 

違う世界を観ているんだ、という発見。発見したときの、あの視界が広がった表情。「違う」ことと、違いを超えて「通じ合おう」とする欲求と。

 

何か惹きつけられる映像だった。

 

 

映画監督・今井ミカさんのブログ:IMAI MIKA〜映画を作る人、手話人〜