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不自由、自由

 

これは泥で染めたバッグ。

奄美大島に古くから伝わる「泥染め」。

先日、大阪中之島のgrafでワークショップがあり、染めてきた。

教えてくださったのは、奄美の泥染職人・金井志人さん(金井工芸)。

 

 「車輪梅(シャリンバイ)」という木を煎じた液と、泥田に、交互に浸して染める。

大島紬の黒褐色は、この工程を何度も何度も繰り返すことで得られるのだそう。

写真のバッグは、3回繰り返してグラデーションをつけた。

 

どんな仕上がりになるのか分からない、完全にコントロールできない。

これは、とてもワクワクする。

〝思ってもみなかった〟仕上がりって楽しい!オモシロイ!

 

以前、絣の展示を観に行ったときに出会った柳宗悦の言葉。

  

人間の思うままに自由に括ったり染めたり、織ったり出来ないのであるから、人間が不自由さの中で作っていることになるのだが、之を反面から見ると、人間はここで不自由でも、之は逆に自然の自由が働いている意味になろう。つまり「人事の不自由」が、「自然の自由」で受け取られているのが、絣織の仕事だということになる。

 

 

 ワークショップ中、教えてくださる金井さん自ら、

「ここの色合いがいい!」「この布地だとこういう風に染まる!」と面白がっていらっしゃる。

仕事としてたくさんの技術と経験知をお持ちなので、

なおさら「自然の自由の中で人間がし得ること」を日々、感じておられるのではないかなぁ。

 

車輪梅は本土にも街路樹として植えられているが、奄美には自生している。泥は、古代からの地層が積み重なり、鉄分が豊富。その車輪梅のタンニン酸と泥の鉄分が、化学反応して染まる。

 

化学は自然の中にあって、人間にその仕組みを見つけてもらうのを待っている。

 

山から木を切り出し、煎じた後の木切れは、薪になり、灰になる。灰は、焼き物の釉薬になったり、鹿児島の郷土菓子・灰汁巻きに使われる。泥田には、鉄分が少なくなったら、蘇鉄(写真)を放り込む。文字通り、「鉄」を「蘇」えらせる。

 

やわらかい、ニュアンスのある色合いには、こんな世界が隠されている。

さらにこの色は、時を経るごとに、使い込むごとに、変化し続けていく。

 

金井工芸:公式サイト